見出し画像

生き残りをかけた変革/富山県庁DXの現在地。

こんにちは!広報・ブランディング推進室です。

DX(デジタル・トランスフォーメーション)という言葉、皆さんはもうご存じでしょうか。経済産業省によると、以下のように定義されています。

DXとは
企業がデータとデジタル技術を活用して、製品 やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、 業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風 土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

経済産業省・DX推進ガイドライン

少し難しいですが、要は「デジタルの活用が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させること」という意味です。日本では、2018年頃から聞かれるようになったようです。

富山県でも、人口減少や少子高齢化が急速に進んでおり、社会を支える担い手不足や、それに伴うサービスの質や産業の競争力、地域社会の機能低下などが懸念されています。

こうした課題をデジタルの力で克服するため、富山県では2021年6月に「DX・働き方改革推進本部」を設置し、県庁内外のDXの推進や、それを支える人材の育成等に取り組んできました。また2024年3月には「富山県デジタルによる変革推進条例」を制定し、地域全体でのさらなるDX推進を目指しています。

取組みの成果として、オンライン上で申請可能な県の手続きは、2020年DX・働き方改革本部設置前)と比べて、2024年にはおよそ40倍(102件→約4,000件)に増加しました。今では申請全体の7割がオンライン上で手続き可能となっています。

今回は、主に県庁内のDX推進を担当するお二人に、なぜDXが必要なのかや、これまでの取組みについてお聞きしました。ぜひご覧ください。



勝島さん
2017年入庁。労働委員会事務局、広報課を経て、令和4年からデジタル化推進室デジタル戦略課に配属。県庁内外におけるDX推進の企画を担当。プライベートでは、アコースティックギターの弾き語りで県内のイベント等でのライブ活動を行っている。

櫻井さん
民間企業を経て2024年に入庁し、デジタル化推進室デジタル戦略課に配属。前職でDXに取り組んだ経験を活かし、地域課題をデジタルの力で解決するデジポック事業のほか、業務DX相談窓口の担当として、県庁内から寄せられる相談に対応している。趣味はキャンプとサウナ。特にサウナは自前のサウナテントを持つほどのサウナ好き。

このままではいけないという危機感。

そもそもどうして県庁のDXが必要なのでしょうか。そこには危機感があると勝島さんは話します。

「デジタル化が進み、 友人等との連絡や買い物など、生活の場面ではスマホ一つさえあれば様々なことができるようになりました。しかし県庁で働いていると、まだまだ紙・対面のアナログな場面が多いように感じます。

世の中がどんどんデジタルに変わっていく中で、行政ニーズもどんどん変化しています。それなのに、県庁がアナログな仕事のやり方のままでは、住民のニーズに応えられなくなってしまいます。」

2024年1月に発生した能登半島地震では、避難所に避難している方の情報を紙でとりまとめていたために、回答する住民やとりまとめるための職員の負担が大きくなってしまったそうです。もし情報をデジタルでとりまとめる体制が整っていれば、その分の労力を避難所運営や、避難している方への支援を手厚くすることに回せたかもしれません。

「紙や対面で進めていたことによって職員や住民に負担がかかっていたところを、デジタルで解消し、その分新たなニーズに応えられるようにしていく必要があります。そのためには、一部だけ電子化するのではなく、業務全体の一元的な電子化が必要です。電子で申請があっても、紙で印刷して決裁を進めていたんじゃ、意味がありませんよね。」と勝島さん。

県では、申請手続きの電子化を進め、これまで窓口や郵送で行っていた手続きの7割がオンラインで可能になりました。

「インターンシップにきた大学生が、紙が多い県庁の職場を見て、こんなにデジタル化が進んでいないのかと愕然としたという話も耳にしました。県庁で働きたい、と思ってもらえるような魅力的な職場にしていくためにも、今後も県庁のDXを推進していく必要があると思います。」

民間での経験を生かして庁内のDXを支える。

県庁全体でのDXを進めるため、デジタル化推進室では、今年(2024年)の9月から「業務DX相談窓口」を開設しました。この相談窓口では、庁内の各所属が業務を進めるうえで抱えている不満や困りごとに関する相談を受けつけ、所属とともに問題の原因を探索したうえで、使用できるツールや解決方法のアドバイスを行っています。

業務DX相談窓口を担当しているのは、民間企業でSEの仕事を経験して、4月から県庁に入庁した櫻井さんです。経歴を生かしてステップアップできる環境を求めて、富山県庁で働くことを決めました。

数年前までは写真のようなファイルを何冊も作成していたが、
現在はペーパーレス化が進んでいる。

「各所属からの相談に乗るときは、まず目的に立ち返って『そもそも何のためにやっている業務なのか』を振り返りながら進めています。9月に始めたばかりですが、毎週のように各所属から相談が来ています。一つずつ解決して、解決事例を県庁内に共有していきたいですね。」

勝島さんも『デジタルはあくまで手段』と強調します。

「何に困っていて、それを解決することでどういう状態を目指したいのか、それを突き詰めていったときに、効率的で継続性が高い手段として出てくるものがデジタルなんだと思います。

さらに言えば、業務そのものを廃止して、人や時間を別のことに割く方が良い場合も出てくるかもしれません。どうあるべきかをまず考えることが重要です。」

業務DX相談窓口で相談を受け付けた後は、デジタル化推進室を中心にサポートする担当者を割り振り、バックアップする体制を整えています。これまでは、システムに詳しい限られた職員に相談が集中してしまったり、相談するための窓口が複数あってどこに相談したらいいかわからないといったケースがあり、窓口を一本化することでその点を改善しました。

ただし、デジタル化推進室の取り組みだけではなく、それぞれの職員の意識も重要だと櫻井さんは話します。

「デジタル化推進室からだと、業務の担当者が実際にどこで悩んでいるのか見えづらいところがあります。担当者が相談しやすい体制づくりはもちろん進めていきますが、各職員が業務の改善や効率化を進めていこうという改善マインドを持ってほしいと思います。」

見えてきた手応えと課題。

勝島さんは配属されてから3年間、県庁のDXを推進してきました。取組みを進めていくなかで、少しずつ手応えも出てきたそうです。

「これまで県庁では、庁内チャットツールをはじめとして、試行も含め様々なツールを導入してきました。以前は『使いにくい』『よくわからない』といった意見も多かったですが、徐々にそうした声が少なくなってきたように感じます。富山県庁全体でデジタルツールへの適応スピードが上がってきているのかもしれません。」

一方で櫻井さんは、取組みが進んできたからこそ明らかになった課題を感じています。

「行政でDXを進める場合、民間企業と比べて、規制や慣習との衝突があってすぐには実現できない場面が多いと感じました。例えば、県の書類は基本的に公文書なので、書類を電子化して保存するだけでも、文書管理規程との整合性が求められます。DXを進めていくためのステップは多いですが、粘り強く変えていくことが必要です。」

富山県のDXのこれから。

2024年11月、県では新たな「富山県DX・働き方改革推進計画」を策定し、今後概ね5年間の取組みの方向性をとりまとめました。

「富山県DX・働き方改革推進計画」より

具体的には「行政手続きや行政サービスのデジタル完結などによる、県民や事業者の利便性の向上」や「災害時のあらゆる場面において、デジタルの活用により対応を迅速化・効率化」などがありたい姿として示されあらゆる分野で県民の皆さんがデジタルによるメリットを感じていただけるよう、県庁全体が主体的に取り組むこととしています。

「県民の皆さんに、少しでも富山県での暮らしや手続きが便利になったね、楽になったねと思っていただけるように、県庁が一丸となってDXの取組みを進めていきたいと思います。」


おわりに

デジタルのシステムやサービスの進歩はめまぐるしく、あるシステムを導入しても、数か月経てば、もっと良いシステムが生まれていることもあるそうです。

県の人口が2050年には73万1千人(推計値)になるとの試算も出ており、今後人口減少に伴う様々な課題が予想されます。まずは県庁全体のDXを積極的に進め、県民の皆さんにも利便性を実感していただける形で、DXの取組みを進めていくことが必要です。

今後も富山県庁のDXにご注目ください!

文・写真:新田


採用情報はこちらからどうぞ。